物凄い爆音が鼓膜を切り裂かんばかりに鳴り響く!
沢山の人達の命が、あっという間に奪われる!
主役の男優が「死ね!虫けら共!」と言いながらマシンガンを乱射しながらスクリーンを駆け抜ける。
身内、仲間の命を奪われた復讐!
自国を守る為の正義!
大義名分を背負って主役の男優が殺していくエキストラ達は果して“虫けら”?
もちろん台詞もなく、真ともに顔すら写ってないが…
ラストシーンは帰国した主役の男が恋人と抱き合いハッピーエンド!
そこに無数に死んで行った“エキストラ”の人格や人生は一切描かれてない。
戦争と言う魔法に罹ると、人は人を殺しても罪にならず、反対に英雄にさえなるのである
“正義と言う名の元”で 行われる殺人を、なんのためらいもなく受け入れ、ラストシーンに涙さえ流す自分に気が付いた時、背中に一筋の冷や汗が流れた。
映画館を出ると、アミューズメントパークの看板が目に入った。
中では…
太鼓ゲームに夢中な中学生。
UFOキャッチャーで縫いぐるみを取って大はしゃぎするカップル。
様々なゲームに没頭する人々の姿があった。
その中に戦争物のゲームがあった。
相手の兵士や戦車などを倒す度にポイントが上がり、最後は捕まっている捕虜を助け出すと言う内容の物である。
もちろんゲームの中の兵士は実在しない。
人格や人生は存在しない。
捕虜を救出すると言う“大義名分”を与えられ、相手の兵士をポイントととしか見ずに殺して行くこのゲーム。
小学生の頃から没頭していたらゲームの世界と現実の世界の区別は、もしかしたら…混乱してしまう人間もいるのではないだろうか?
ほんの少し鳥肌が立つのを感じた。
再び街に出た。
初夏の陽射しに目を細める。
ふと…
この街の中で自分は“エキストラ”と同じだなって感じた。
自分の中では家族や友達や知人など、数多くの人々と繋がっているが、この街の雑踏の中では、その他大勢の中の通行人Aである。
何千人の人々が通行人Aであるが、それぞれに人生があり、生きてきた証があり、これからも生きて行く権利がある。
映画やゲームの中で、余りにも簡単に殺し合いをしてる人間達に…
“命の重さ”
“命の尊さ”
を見失い掛けてはいないか、今もう一度考え治す時期が来てるのではないだろうか?
街はそれでも動き続けてる。
雑踏の中に、また私も飲み込まれて行く!
通行人Aとして…