『ーー失礼。あなたと店員さんの会話が聞こえてしまい、あなたの恋人がどういう意図で強いところが好きだと言ったのか気になったもので』




少し困った風に苦笑した顔につられて同じく苦笑を返した。





見たところ、私と同じ1人で飲んでいるらしいこの男性。
声を潜めて話してたわけじゃないもの、聞かれてもしょうがない。




だからといって見ず知らずの男性に話せるような内容ではない。




ーー普段の私ならそう判断して、断っていたと思う。




でも、義彦のカクテルの酔いが回って来たから?




それとも、単に誰でもいいから聞いて欲しかったから?




「・・・恋人、ではなくて、正しくは昨日まで恋人だった相手です。あまり楽しいお話じゃないかもしれませんけど、それでもいいですか?」





気付けば私は愛想笑いを浮かべてそう言っていた。