〈豊サイド〉 『あーあ。』 三回の窓から、中庭の様子を俺は伺っていた。 そして思わず、声を漏らしてしまう。 結愛の彼氏、賢治先輩は、結愛を置いて中庭を出て行ってしまった。 結愛が泣き崩れるのは、その直後のこと。 『…賢治先輩も冷たいんだから。』 苦笑いを浮かべながら中庭を見守る俺は、まるで2人の行く末を解説している実行中継者のよう。 ――賢治先輩は、きっと結愛が大切。 これは、俺が一番わかっていることだと思う。