「…普通。」



口では冴えない答えを出しているけど、結愛の弁当は美味しいと思う。


…弁当だけ、は。



『先輩っ、あたし、今度の日曜日遊びにいくんです!』

「…ふーん。」



この時の俺は、まだ極めて冷静だったと思う。



――気づかなかったんだ。


結愛はいつも通り果歩ちゃんと遊んで。

俺もいつも通り、ゆっくりと家で過ごす。



そしていつものように、週末を明けて。


いつも通り、結愛と学校で過ごす。



――毎日作っていた弁当を、いつのまにか持っていくのをやめた理由のように。


真実はまだ、見え隠れしていた。