弓道部の先輩にとって、こんな時間に会うことはほんとに珍しい。


「さっき、けがをしたんだ。たいしたことないが…」


一応、病院に行くらしい。


「…私も行きましょうか?」


ちょっと抜けている先輩を一人で病院に行かせるのは不安だ。


「構わない。綾部は暗くなる前に帰れ。」


後ろ髪を引かれながら、私は先輩と別れた。


家に帰ると、私はちぃに電話した。


先生に心配されたこと、先生と話した内容。


事細かく、すべて。


もちろん、波留都先輩の事も。


『でもさぁ、あんまりはまっちゃダメだよ?傷付くのは、琉珈なんがから…』


ちぃの声は電話でも分かるくらい心配していた。


「…うん。分かってるよ。ありがとね。」


それから、電話を切ってその日は寝た。








夢を見た。


先生と結ばれる夢。


楽しそうに、楽しそうに。


なのに、朝起きたら私の頬には涙が伝っていた。


やっぱり――


諦めなきゃ、いけないんですか――?