「で?何かあったのか?」


先生は腕組みをしながら、心配そうに聞いた。


「何かあったけど…解決しました!」


私は、とびっきりの笑顔で言った。


「ほんとに大丈夫なのか?」


「はい!」


そうか、と先生は柔らかく笑って言った。


「何かあったら言えよ?俺が何とでもしてやるから」


先生に心配されてる、そう思うだけで嬉しくて心が破裂しそうだった。


それから、少し話をして職員室を後にした。


「綾部?」


廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。


「波留都先輩!」


声の主は二年の北本 波留都(キタモト ハルト)先輩だった。


優しいけれど、寡黙で誤解されやすい。


ほんとは、照れ隠しか人見知りのせいだけど。


「どうしたんですか?」


「いや、一人みたいだったから…。」


波留都先輩は顔を赤く染めながら、もごもごと言った。


「良かったら、一緒に…。」


その先は聞かなくても分かる。


「いいですよ!喜んで!」


そう言うと、目尻を下げて、笑ってくれた。


「波留都先輩がこんな時間に帰るなんて珍しいですね。」