2月14日。



バレンタイン当日――。



夾には朝一番に渡しにいった。


それから、波留都先輩に渡しにいって、今日は終わるはずだった。



放課後、ちぃは彼氏と会うので私は一人、教室で鞄とにらめっこしていた。


鞄には、綺麗にラッピングして少し大きめの箱が丁寧に置かれていた。



渡すつもりはなかったけれど、やっぱり割り切れない気持ちがあって、こうして作るだけ作ってそっと鞄に忍ばせてきた。



いつの間にか、職員室の前まで来ていた。


そっと中を覗くと、先生が他の女子生徒と話をしていた。


「ねー、彼女いないんでしょー?」


猫なで声と言うのだろうか。


気持ち悪くてしかたない。


「あぁ、まぁな。」


胸がぎゅうと締め付けられる。


「これ、本命だよ!受け取って?」


見ているのが苦しくなって、私は目をそらした。



先生がそれをどうしたのかは知らない。


だけど、先生が嘘を吐いてる事と、本来なら私があそこにいるのにという後悔を腹立たしさが入り交じって、見てられなかった。



「ん?綾部じゃねえか。どうした?」



顔を上げると、蒼吾先生がいた。



「あっ…」


私は、とっさに蒼吾先生の胸にチョコを押し当て、言った。


「あげる!じゃあね!」


後ろで、何か言っていたけど、気にせず走って家に帰った。