「夾!何でここにいんのよ!」


「ん?そろそろ本格的に作り始める頃かと思ってさ。そしたら…ビンゴ!」


夾はニッコリと笑って、とてとてと犬のように近寄ってきた。


「ビンゴじゃないわよ!アンタの味見は味見じゃないのよ!」


夾に味見させたら、材料代がふくれて私、破産するし!


何としても、夾を追い出したい…!


「とにかく帰って!邪魔!」


夾はシュンと大げさにうなだれて、ソファに三角座りして言った。


「そんなに言わなくてもいいじゃん…。凹むんだけどー」


「うっ…」


ただでさえ、童顔で可愛らしい顔立ちの夾に上目遣いで見られると、落ちない女の子はいないんじゃないのか…?



幼なじみじゃなかったら、きっと私は心に矢が刺さって抜けなくなっているだろう。



「…、分かったよっ!み、見てるだけなら…」


夾はパアッと明るくなって、犬が駆け回るみたいに喜んだ。



私はエプロンをしながら、ポテチを食べながらソファに座っている夾にふと尋ねた。



「アンタ、彼女は?高校入ったらつくるって啖呵きってたじゃない。」


夾はピクッと反応して、飼い主に怒られた犬みたいにうなだれた。



さっきとは、比にならないほどに。


「みんなして、可愛い可愛いって…。ちっとも俺を男扱いしねえし…」


それから、夾を元に戻すのに何時間も費やし、結局作れなった。