えっ……? この声は……。 聞き覚えのある声に、クルッと後ろを向くと、廊下の壁に背中を凭れて立っている人物が映った。 「九条君…、こんなところで何してるのよ…。」 春石先輩と帰ったんだとばかり思ってたけど、まだいたんだ…。 松宮先生に用事でもあるんだろうか…。 「ここに居る理由なんて、たった一つしかねぇじゃん。」 九条君は壁から背中を離すと、首を傾げている私の目の前までやってきた。 「紗智を待ってた…。」