「ちょっとぉ…」

差し出した手は
いまだ空に浮いたまま。

なぜか翔は
春奈のノートをみている。

一体なんなの。

その時、

「桜井春奈って、春ばっかりだな」

と、翔がつぶやいた。


それは春奈がずっと
気にしていたことだった。

『桜井春奈』

桜と、春

なんで苗字と名前両方とも
春を思い起こさせる
ものにしたのか。

せめてもの救いは
春奈の奈の字が
菜の花の菜でなくて
良かったといったところ。

気にしていたことを言われ
ムッとなる。

「もう、返してよ」