好きな人、ねぇ…

正直、春奈には今のところそれに該当する人物はいない。

だからなんでみんなが急にそんなことを言い始めたのかが不思議だ。

ちょっと憂鬱そうな顔をしていたところだった。




「翔…、愛華ちゃんって子が好きなんだ…」

そうポツンと暗い顔で呟いたのは、智美だ。
肩につくくらいのボブカットで、女の子らしい、かわいい子。
頭もよくて、学級委員をやっている。

「どうしたの?」

鈍い春奈は智美に問いかける。
たぶんこの時点で今ここにいる半分以上が智美の気持ちに気付いたはず。

「あたし、翔のことが好きなんだよね」

「えっ!!」

そういったのは春奈ともう一人の子だけ。
他の子たちはやっぱりね、みたいな顔をしている。


「そうなの?なんで?どこがいいの?」

なぜかドキドキする春奈。
一気に智美を質問攻めだ。

「う~ん、わかんないけど、翔が転校してきたときからいいなーって。それでずっと見てたら好きになっちゃったの」