「俺、携帯持って来てないんで」
俺もトイレに行こうかと思った。
「知ってるよ~。新垣先生!後ろのポケットに携帯入ってるだろ?」
山畑先生はそう言いながら、隣にいた女性の肩を抱いた。
「本当にすいません。そういうの、困るんで」
俺が女性の間を抜けて、トイレに行こうとすると山畑先生が絡んできた。
「まぁ、そう怒るなよ。新垣先生。次のお店も一緒にどう?」
トイレから戻ってきた喜多先生が今度は標的にされていて、アドレス交換を迫られていた。
俺は山畑先生の腕を掴んで、トイレの前まで歩いた。
「まだ俺のことあんまり知らないと思うんですが、本当にこういうの困るんです。長く付き合ってる人はみんな知ってるんだけど、俺は奥さん一筋なんで」
「何、真剣に怒ってんだよ~。喜多先生から新婚だって聞いていたけど、たまにはいいじゃん。バレるわけないんだし」