先生は、食後のデザートの巨峰をパクっと口に入れた後に、手を伸ばして私の頭を撫でた。




「あの時は、本当によく我慢した。えらかったな、直」



私も真似して先生の頭を撫でてみる。



「先生もよく頑張ったね。先生も寂しかったんでしょ?」



先生が巨峰を皮ごと私の口に入れる。




「ああ、お前よりも俺の方が寂しかったんだよ。絶対に」



「先生は誰にも弱音吐けなかったもんね。私には友達がいたから」




巨峰をもぐもぐと食べていると、立ち上がった先生が突然私にキスをした。





そして・・・・・・



「ちゃんと皮、出せよぉ・・・・・・矢沢」



懐かしい“矢沢”って響きに感動しているうちに、私の口の中から巨峰の皮が抜き取られた。