セルフタイマーでセットしようとしていると、すれ違った老夫婦のおじいさんが声をかけてくれた。
「撮りましょうか?」
70歳くらいのご夫婦で、腕を組んで歩いていたのが印象的だった。
「お願いできますか?ありがとうございます」
先生は、デジカメを渡し、使い方を説明する。
隣にいたおばあさんが、私に近付いてきて、小声で教えてくれた。
「昔は、カメラマンだったんですよ。あの人」
少し誇らしげにそう言ったおばあさんの顔が、赤く染まった。
「そうなんですか!すごいですね」
昔カメラマンをしていたというだけあって、撮ってくれた写真は完璧だった。
紅葉のアーチの真ん中に私と先生が・・・・・・
「ありがとうございました!!」
私と先生が頭を下げると、そのご夫婦も頭を下げて、階段を下りて行った。
「いいな、ああいうの」
先生は、お二人の背中を見つめながら私の手をぎゅっと握った。
「うん。いいね」