「今度は花見の時期に来てもいいな。綺麗だろうなぁ、桜」
「そうだね!!ちょっと散りそうってくらいの桜が好き」
「あ、俺も。それ好き」
先生の今の発言で、また思い出しちゃった。
絶対に先生は覚えていないんだろうけど、高校生の頃・・・・・・
体育教官室で、私が先生にグレープフルーツの飴をあげたことがあった。
その時、先生は言ったんだぁ。
“俺、グレープフルーツの飴、一番好き~”って。
私は、“一番好き”って所だけを何度も何度もリピートしちゃったんだよ。
先生に、そう言われる女の人ってどんな人なのかなって。
言われてみたいなって。
「な~お?また妄想してた?」
紅葉を見上げながら、時間が止まってしまっていた。
先生は、私の手を引っ張って歩き出す。
何気ないことだけど、こうして先生と手を繋いでいるって、当時の私には想像もできなかったことだよね。