「私・・・・・・考えないように、思い出さないようにしてたんだ。本当は、時々よみがえることがあった。でも、今が幸せだから考えないようにしてた。今のお姉ちゃんだけを見ようって思った。だって・・・・・・本当に仲良くなれたことが嬉しかったから」
素直な気持ちだと思う。
今の平和な関係がどれほど幸せなことか、直は一番わかってる。
だから、過去の辛い思い出を心の奥の箱の中に閉じ込めて、鍵を閉めていた。
「過去も消えないけど、未来も消えないよ。これからの直とお姉ちゃんの関係は、今から作っていけばいいんだよ」
ミルクティーをゴクンと飲み込む音が響く。
俺も真似して音を立ててみる。
「先生の考えてること、当てていい?」
肩を寄せた直が、いたずらな笑みを浮かべた。
俺は視線をそらす。
だって、今の直・・・・・・本当に俺の心の中、全部見えている気がするから。