私は涙が止められなかった。




沙織に対しての涙なのか、過去の自分への涙なのかよくわからない。



でも、目を閉じて浮かぶのは、あの恐ろしい顔をしたお姉ちゃんだった。




グラスを投げたことがあった。


リビングにガラスが散乱して、歩くことができなかった。



大きな事故や事件にならずにお姉ちゃんは更生することができた。





沙織も妹にそれを望んでいた。




「家の中で暴れているだけならまだいいんだ。外で犯罪に巻き込まれたりしないかってそれが心配・・・・・・」




沙織の目にも涙が浮かんでいた。




「見捨てないのは、家族だけなのに。どうしてそれがわからないんだろう」




沙織は、鼻をすすって、天井を見上げた。




私が差し出したティッシュで鼻をかんだ沙織は、少しスッキリした顔で言った。





「いつか・・・・・・変われるよね!!」



私は、涙を拭いて頷いた。




言いたかった。


“変われるよ”って。




お姉ちゃんも変わったもん。





優しい顔になった。


優しい瞳になった。




もうあの頃の面影はどこにもない。