「ずるい・・・・・・か。確かにずるいな、俺は。あきらめたからって言ったのも、気まずくなりたくなかったからだし、実際まだあきらめてないし。それに、告白したらもしかしたら俺のこと気になってくれるんじゃないかって期待してた部分もあるし・・・・・・」
「いい加減な気持ちで沙織に近付かないでください。沙織は本気で大野さんのこと好きだったんです。ひどいことをされてもまだ大野さんのこと忘れられなくて、辛い想いをしてるんです。誰でもいいなんて気持ちで沙織を誘うのだけはやめてください」
エレベーターのドアが開く音がした。
私は立ち上がって、後輩なのに生意気言ってすいませんと謝って大野さんから離れた。
トイレに向かった。
赤くなった顔を見て、涙がこぼれそうになった。
こうして、誰かと本音でぶつかることから逃げていた気がする。