「この前、沙織には内緒にして欲しいって言ってましたけど、それならどうして私に好きだなんて言ったんですか?沙織のこと大事に想っているなら、私に気持ちを伝えたりしないと思うんです」
朝から怒りが込み上げる。
多分、大野さんの軽い受け答えと、ニヤついた顔にイライラしていたんだ。
「この前も話したように、お前に気持ちを伝えないと新しい恋ができない気がしたから。でも次の相手が沙織ちゃんって決まってるわけじゃなくて・・・・・・もしかしたら沙織ちゃんとってこともあるから、その時の為に、内緒にしておいて欲しいなと思ったんだよ」
「そんなのひどいです!!私と沙織が仲良しだって知っているくせに。沙織は今も大野さんのことが好きなんです。だから私は応援したかった。でも、今の大野さんを見ていると沙織みたいないい子が好きになる相手じゃないって思います。大野さんずるいです」
男の人相手にこんな風に大きな声を出して怒るのは、初めてかもしれない。
そんな風に客観的に自分を見ているもうひとりの自分がいた。
大野さんに怒りながら、自分自身にも怒っていた。
どうして自分で気付かなかったんだろうって。