あの頃、俺は直を知らなかった。
人を愛すということがまだわかっていなかったんだと思う。
その子達はどんな想いで、縁結びの神社に行ったんだろうか。
学校では怒ってばかりだった俺のどこに魅力を感じたんだろう。
当時は、そのお守りに込められた気持ちとか今ほどよくわからなかった。
あの修学旅行で、どこを回ったかもよく覚えていないけど、いつか愛する人ができたら一緒に歩きたいと思った場所があった。
あれがどこだったのか・・・・・・
よく覚えていないけど。
「新垣先生~、京都へ旅行行くの?」
突然声をかけられて俺は、驚いた顔で振り向く。
ニヤっと笑ったのは喜多先生だった。
京都の本片手に、ボーっとしてしまっていた。
「ラブラブだねぇ、相変わらず」
「喜多先生は、奥さんと京都行ったことありますか?」
今日は大事な会議があるから俺も喜多先生もスーツ姿だった。
上着を脱いだ喜多先生は、どうだったかなぁと言いながらソファに腰掛けた。