あー。

氷が溶けてく。
グラスに水滴がたくさん付くと、コースターがくっつくんだよねぇ。

外、歩くのヤダなぁ。
あの空気が纏わり付く感じがヤダ。


ってゆうかさ、まだ来ないんですけど。

もう7月の終わり。

家でダラダラ過ごしてたら急に真麻に呼び出されたんだ。

どうやら、些細なことで晃くんとケンカしたらしい。
真麻達はよくケンカする。たいていは、お互いのヤキモチが原因なんだけど。

私からすれば、ある意味羨ましかったりするんだけど。

私には、ケンカする相手どころか、放課後や夏休みでさえも一緒に過ごす相手なんかいないわけだし。

まぁ確かに、彼氏は欲しいと思うよ。
二人で色んなとこに出掛けたり、プリ撮ったり、記念日を過ごしたり…



でも…――ただね?

怖いんだ。ほんの少しだけ、怖い。


自分や家族以外の人間を大切な人として見てしまったら、自分を見失っちゃいそうで。

実際、残念ながらそこまで誰かを想うなんて経験した事がないから…
そんなふうになる自分が想像出来ないだけなんだけど。



はぁーー。



ストローをグルグル掻き交ぜながら、溜め息を吐き出した。



『あ。幸せ逃げた。』

『ホントだ。』


頭上から可愛いらしい声と笑いを含んだ低音が聞こえてきて、ふと頭を上げてみる。


『ごめーん。待った?』


目の前にいるのは、私を呼び出した張本人とその原因である人。


…と?


『こいつも一緒だけど、いいかな?綺乃ちゃん。』



えええぇ−−−−−−ッ!!


なんで?なんで?

何でいるのよ−−ッ!?