あれから、しばらくの間ボーっとしてたらしい。


真麻の声で、ハッとした。



時計を見ると、そろそろ出なきゃヤバイ時間。


『真麻、アタシ帰るね。終電なくなっちゃうし。今日はありがと。』


そう言ったアタシを真麻は心配そうな顔で見上げる。


『綺乃…、一緒に帰る。』


立ち上がる彼女を誰かが止めた。




『送るよ。』



???


誰?




『直哉さん!!!―――って?え?』


真麻もアタシも、マヌケな顔してたと思う。


『――プッ。なんつー顔してんだよ、お前ら。俺、飲んでないから大丈夫だし。』


直哉さんは、立ち上がったと同時にアタシの腕を掴んで

『わりぃ。俺、帰るわ。今日はお疲れさん。またな。』

そう言って、スタスタと歩き出した。



『えっ、あ、あのっ!!ちょっ‥』

『ん?大丈夫。飲んでないから。』


なんて、満面の笑顔で言われて。

パニックになりながらも、ふと碧伊サンの方に目がいってしまう。





――――――ドクン。




碧伊サンのまるで、突き刺すような視線にぶつかった。