「わたしね、頑張ってるよ。先生って呼ばれて。」


鳥の鳴き声に混じって車のクラクションの音も聞こえる。

でもわたしはお墓だけを見て続けた。


「…壮陛と出会って、付き合って、キスして…」


──今でも忘れない、あなたの顔、そして声、ぬくもり。


「元気にしてる?そっちの天気はどう??」


──こっちはあのときみたいに気持ちいい天気だよ。


「そっちの世界はどう??」


──こっちの世界では涼子ちゃんとフジくんが結婚するよ。


「フフ…会いたいでしょ?」


──わたしも会いたいよ。



あと6年たてば壮陛の倍の年齢になっちゃうんだ。

生まれ変わりは16歳、わたしは32歳。

ひどいな…。


フフっと笑ってしまった。



お墓の花が風でふわりと揺れた。


「壮陛…──。」


あのときもだった。

涼子ちゃんが家に向かえに来てくれたとき、あの風は壮陛だったんじゃないかと思う。

優しい風だったもん。

今のように。


「来てくれたんだね…。」

立ててある花に少し触れた。

花びらだけど壮陛に触れてるような気もして。