「菜穂ちゃん、壮陛は大丈夫だよ。あいつは強いから。」


フジくんもわたしをなだめるように言う。

言い方からわかる。

きっと──

ひどいんだって。



20分程で病院についた。

うちの近所の大きな病院。


涼子ちゃんに手を引かれて走るフジくんの後を追った。

そこは手術中と書いてある部屋の前だった。


「おばさんっ、壮陛は…──」

椅子に座って顔を下げていた人にフジくんが話しかけた。

この人がお母さんなんだ。

泣き崩れた顔からでも壮陛の面影が見える。

愛しい壮陛の。


クビを横にゆっくり振りながら

「まだ…わからないみたい…。ごめんね、来てもらったのに。」

そう言ってまた目から涙を溢した。


あの扉の奥に壮陛はいるの??

一歩ずつ近づいてドアに手を置いた。

開くわけないけど、ただ少しでも近くにいたかっただけ。