泣きながらしがみついてくる菜穂。


「うぅっ…──だって壮陛…、木下さんと…」


「あいつは…もう別れる。好きなわけじゃなくて、お前がいなくなってどうでもよくなって…。好きとかじゃねーし…。」

それを言われると強く言えねーんだよな。


「でも…」

「うるさい。」


何か言おうとするのを遮って止めた。

俺に不利な言葉だろうし。

少し力を緩めて菜穂を見た。

泣き顔で俺を見つめてくる。


「お前がいいから…。」

そして何日ぶりだろうか。

強引に、何も言わせないようにキスをした。


こんな明るいときに、こんな目立つ場所で。

でもなんとも思わなかった。


ただ、こいつの体温を久しぶり感じれたこと、やっとそばに来れたってことだけ、それだけしか思わなかった。


唇を離したら泣きながらずっと俺に抱きついてきた。


「わたしも…──グスッ…壮陛じゃなきゃ…」


「じゃあ戻ったってことで。」


そんな菜穂を力強く抱きしめた。

俺たちが付き合ってた数ヶ月。

たった数ヶ月だったのに絆って深かったみたいだ。


こんなに別れても思い合ってたんだから。


ただ…ずっと一緒にいれる時間が刻一刻と縮まっていた。

永遠の別れじゃないけど高校生で1年ちょっと離れるなんてあまりにもキツかった。