俺が立ち止まったところは学校から5分程離れたとこにある小さな駐車場だった。

昼間ということもあって車の数は少ない。


「…──全部、聞いて。」

そう言って俺は菜穂の手を離した。

バイトまで時間ねぇ。

こいつもそうかもしれない。

でも菜穂の返事がどうであれ話をやめる気はなかった。


「元カノのこと。あれ…会いたいって言われてた。あいつ足、切断してんだ。」

菜穂の表情が驚いたのがわかった。

車椅子なのは見てるだろうけど切断は知らなかったみたいだ。


「で、別れたのは切断がわかって俺に気つかわせたくなかったからみたいで。」


「─うん…。」

相槌を打ってくれた。


「だから…会った。でも、秘密にするつもりはなかった。ちゃんと言うつもりで。でも先に菜穂に見つかった。それがあのとき。」

それには相槌を打たなかった。

下を向き、靴を見つめてるように見えた。


「ちゃんと話そうと思って家に行った。誤解だって。会いたいから会ってたわけでもないし、ちゃんと皐から話聞こうて思って会った訳だから、俺は。」


でもあの日…


「お前はあの男のバイクに乗ってて。正直もう無理かもって思った。お前は俺なんかよりそっちに行くかもって。」


あの男は菜穂のこと好きだろうし。


黙って下を見続けてる菜穂に何かが壊れたように喋り続けた。


「でも話したかった。俺は…別れたくなかったから。今もそれは…変わってない。」


もう限界だ。

驚いて顔をあげた菜穂を引き寄せた。


「もう絶対苦しめない。文句言わず待つ。だから戻ろう、俺ら。お前じゃないと無理だ。」

力を思いっきりいれた。

細いこいつが折れてしまうのじゃ?と思うくらいに。