あんな話をしたせいだ。

俺は昼休みが終わって本鈴が鳴る前に席に着いたときに菜穂を少し見た。

そして別れて初めて、目が合った。

ぱっと逸らす俺、多分菜穂も。

別に何かを話すわけでもないのにお互いをチラっと見てたわけだ。

いつ、アメリカに行くんだろうか。

今学期までいるんだろうか。

何か言って去るんだろうか。


そのときだった。


「す、涼風くん…。」

横から聞こえた声。

しかも菜穂の方から。

まさかと思ってパッと横を見ると見たこともない女が立ってた。

期待した自分、違ったときの落胆、いろんな意味で驚きだ。


「帰りに校門で待ってるから…その…」

小さな声でボソボソ言う女を見たときに見えた菜穂の顔。

下を向いてまるで話を聞かないようにしてるかのようだ。


だめだ、俺の頭の中はまだ…。


気付いたのに…実行にうつせない。

やはり人生は転がるものなんだな…。

だめなように。