「は??」

赤星さんは素っ頓狂な声をあげた。

それはわたしが壮陛のことを相談したから。

毎日ミス北洋と帰ること、行かないと言ってた飲み会にミス北洋の言うとおり行くことになったこと、最近連絡がないこと。


「やっぱりおかしことなんですか?わたし…初めてだしなんか…──」


「おかしいに決まってるじゃん!!なんで目の前で他の女の子と帰るわけ?ありえんって!!」


この状況のことはおいといて、やっぱありえないのか…。

そういえば涼子ちゃんが


「菜穂ちん、よく平気だね…。」

って言ってたのを思い出した。

平気なんかじゃないけど平気なフリをしてたのに。

それ以来平気のフリが上手になっちゃっただけ。


「そうなんですね…。あ、ここのケーキ美味しいですね。」

わたしはチーズケーキを頬張りながら赤星さんの言葉に耳を傾けた。

傷つくからあんまり壮陛の話はしたくないけど話してしまったからしょうがない。

自業自得ってやつ。


「昔は連絡あってたんだよね?ずっと同じ状態でいるには努力が必要だと思うんだ。でもその努力がストレスになることだってあるとも思う。前みたいに戻りたいって思ってもそれを強要するのは違うと思うから言わないがいいと俺は思う。」


「……。」


わたしは何も言えなかった。

口が動かなかった。

だって、経験がなさすぎるわたしにはあまりに大きい言葉だったから。


「安心してるってのもあるかもしれないけど、でもそれが嫌なら無理じゃない?別にメールや電話が重要ってわけじゃないかもしれないけど自分の中でモヤがあるから相談してきたんでしょ?」


それに小さくわたしは頷いた。

いつの間にか頬張るために動いていた手が止まっていた。


「別れたいとかは全くないの?」


別れる…。

考えてもみなかった言葉だった。