「もういい。俺、帰る。」


そう言うとチャリのペダルに足をかけた。

それを聞いた菜穂は目から手を離して俺を見てしがみついてきた。



「ヤダ…ごめん!!ほんとにゴメン!!帰ったらヤダ!!」


本当に泣きながら訴えてきた。

ちょっとやりすぎたかな…って思って俺を掴んでる菜穂の手を優しく離してチャリをちゃんと止めた。

よく考えたら俺、またがったまんまだった。


ちゃんと止めたらまたいきなり菜穂が抱きついてきた。

理性ふっ飛ばさせようとでもしてんのか、コイツは。



つーか自信がなくなったって理由がアホだ。

皐のことはもうとっくに忘れてるし、俺だってコイツがいなきゃダメなのに。

本物のバカだ。

いらんことで悩みやがって…。

菜穂を覗き込むと必死にしがみついて泣いてた。

やっぱり可愛くって


「帰らないからチャリ止めたんだろ?」


抱きついてる菜穂を抱きしめながら優しく言った。

その言葉に顔をあげる菜穂。

でもよかった…。

こいつも俺のこと、好きだったんだ、ちゃんと。

心配して損した。

疑った自分が嫌になった。



「壮陛…大好きだよ。」


不意打ちを食らわす菜穂の言葉に俺は熱くなるのがわかった。

暑いからじゃなくて…。



「…──知ってる。」


そう言ってごまかした。

恥ずかしいのを。


その瞬間、菜穂が背伸びして俺にキスをした。

柔らかく、でも少し震えながら。


恥ずかしそうにしてる菜穂を今度はしっかり抱きしめながら


「俺も好きだから…。」


って精一杯の言葉を告げてそして今度は俺から菜穂の唇にキスをした。