出会わなければこんな辛い想いをすることはなかった。
でも出会わなければこんなに幸せを感じ、笑うことは出来なかった。
初恋と言っていいほどのわたしの1つの恋は初恋にはレベルが高かったね。
これから…傷ついても、つまずいても起き上がるよ。
そして精一杯伝えるから。
わたしなりに。
壮陛に出会えて本当によかった。
無理なことかもしれないけど、またあの空の下、あの場所で笑いたいな。
あの日のような日に。
きっと今なら…笑える。
暦ではもう春真っ只中の4月。
天気は晴れなのに異常に寒かった。
春だなんて絶対嘘って思う程に。
この寒い中、わたしは向かった。
今日から入学する高校へ。
足取りは重い。
なんといってもわたしは入学式から1週間、休んでいたから。
原因はただの風邪。
ただ熱が出ると下がらないタイプのせいでかなり寝込んでしまった。
イタリア人である父親と日本人である母親から産まれたわたし、クリスティアーノ 菜穂。
今日から私立北洋高校の1-3に入学します。
説明会や制服採寸の時に1度だけ来た学校。
でも教室は初めて。
説明会のとき、パパと行ったせいで外人だって相当コソコソ言われてたっけ…。
大丈夫かな??
友達とか出来るかな…
遅れを取ってるからかなり不安。
ドキドキしながら校舎に入った。
だいたい今でも相当目線が痛い。
堀りの深い顔立ち、金に近いさらさらストレートの髪、165センチの身長に45キロの体重。
短いスカートの上に紺のセーラー、そして紺のハイソ。
長い手足。
「うわ、外人?ハーフ?1年の子かな??」
「すっげ…」
こんな声が聞こえる。
大体いつもわたしは外見で判断される。
外国の人は進んでるから…とか、話しにくそう…とか。
中身はそのへんの子と全く変わらないのに。
お陰で友達は中学の時一緒だった清美だけ。
みんなわたしをすぐ遠巻きにしてしまう。
それに清美だってよく知ってるってわけじゃない。
それでもその清美は…違う高校。
外見で告白されることだって多々ある。
話したこともないのにね。
誰も中身を見ようとしてくれない。
それがすごく淋しかった。
高校で気が合う友達を見つけたいってのが1番の目標に掲げていた。
なのに1週間も遅れててお先真っ暗。
あわよくば彼氏も…なんて先の先の先の話だよ。
教室に入るとワイワイとしていた。
元は男子校だったため、男が7割を占めるこの高校。
クラスは学ランだらけだった。
ところどころにいるセーラー服。
席がわからないわたしは、とりあえずトイレに行こうと思い教室を出ようとした。
「もしかして、クリスティアーノさん?」
後ろを振り向いた瞬間に女の子の声が聞こえ、また教室の方を見た。
「やっぱり?ハーフの子がいるけど風邪で休んでるって担任が言ってたもん。ハーフとは聞いてたけど外人みたいだね♪あ、わたし青木涼子。で、こっちが…━━」
「本田鈴よ。クリスティアーノさんの名前は菜穂だったよね?」
それは2人の女の子からの声だった。
青木涼子ちゃんは茶髪のセミロングでフワリとしたパーマ。
笑顔がハンパなく可愛い。
本田鈴ちゃんは黒髪でわたしと同じくらいのロングヘア。
メガネをかけて、知的美人と言っていいと思う。
「あ、うん。クリスティアーノ菜穂って言うの。よろしくね。」
「菜穂ちゃんね♪どっか行くの??どこも行かないんだったらここ座りなよ。ちなみに菜穂ちゃんの席はあっちだよ。」
涼子ちゃんが指差したところにある机の上は教科書やプリントが山積みだった。
「ありがとう。うわー…すごい教科書のってるし…。」
「風邪、もういいの??」
「うん、ありがとう大丈夫。涼子ちゃんと鈴ちゃんって呼んでいいのかな?」
「もちろん!鈴はね、口数少ないし本ばっか読んで気取ってるけどいい奴だから♪あ、同じ中出身なんだ♪わたしたち。」
鈴ちゃんは気取ってるとか言われても本を読んで口を全く開かなかった。
「そうなんだ、いいな。わたしこの高校に友達いないから…。」
「鈴、喋らないから退屈してたの。菜穂ちゃんよろしくね♪」
こんな簡単に友達が出来ていいんだろうか??
疑いたくなった。
神様なんていないって思ってたけど、もしかして風邪で苦しみながら頑張ったご褒美をもらえたんじゃないかって思った。
そう思うくらい欲しいものだったから、友達は。
この出会い、わたしにとってこれからも大きいものとなるということにまだ気付いてなかった。
初めての大きな友情というものに。