「ないなぁ…。」

しばらく 悩んだ後、佐々木さんは
『つくづく そう感じた』
と でもいうかのように、
言葉を 噛み締めながら、そう言った。

私:「えーっ!ないんですかぁー!?」


予想外の 返事に、場にそぐわぬ、スットンキョウな 声を出してしまう私。


佐々木さん:「仕事上、好きでもない女性と 食事をする事は あるよな?でも それは 同情して欲しい 相手の場合もあるし。」


と、悪戯っぽく笑う 佐々木さん。


真剣なあたしは
笑いもせずに、
佐々木さんを 睨みつけたまま、首を 大きく 横にふった。

あたしが 聞きたいのは そんな事じゃない。

何が いいたいか 分かるよね?
ごまかさないで。


心の中で そう思っていると、佐々木さんは、
「フーッ」
と 大きく、息を吐いた。


そして、とても大事な事を 話すかのように、呼吸を整えた後、
あたしの好きな、
例の 小声で 話し始めた。