俺的に、好きな女の声で起きれるのはこの上ない贅沢だと思う。
そんな贅沢を毎日味わえる俺は正に幸せ者だ。
中学時代はまともに学校に行ってなかった俺が、2年の時は皆勤だったのは、ただただ凛子のおかげだと思う。
眠いしダルいけど、コンビニへ向かうまでの俺は鼻歌なんか歌ったりして、毎日会っているはずなのに、毎日が新鮮で楽しくて仕方ない。

「ともきちおっそーい!」

「わりっ!ワックスが行方不明でさ。
必死の捜索の末、見事発見、みたいな。」

ニッと笑ってピースすると、凛子は呆れたように笑った。
凛子は俺をともきちって呼ぶ。
犬みたいだから、って理由らしいけど。
他の奴から呼ばれたらイラっとするであろうその呼び方も、凛子に呼ばれるとくすぐったくて心地いい。
そんな凛子はちまっとしてて、男の俺からするとカナリ小さい。
たしか153センチって言ってたと思う。
エクステの必要ない、綺麗に伸びた長い髪は先週パーマをかけ直したばかりだ。
俺がエクステが嫌いで、パーマをかけたロングヘアが好きだと言ったのは1年の時の夏。
まだその時は付き合ってなかったのに、次の日にはエクステを外してきた凛子を見た時、俺は本格的に凛子に惚れた。
それから髪を伸ばして、俺の為に初めてパーマをかけた頃、俺たちは付き合って1年を迎えた。

「ねぇともきちー?
今日のお弁当は4人で食べようね?」

少し前を歩く凛子を眺めながら歩いていると、急に凛子が振り返った。

「おっ…おう。」

きっと口元は緩んでたと思う。
そんな俺を悟られないように慌てて凛々しい顔を作る。