「ちょっ、ともきち!失礼じゃん!」

彼女さんがバシンと肩を叩いた。

「ごめんね小野町さん。」

本当に申し訳なさそうに頭を下げる彼女さんに、大丈夫だよ、と手を振ったその頃には、もう教室の雰囲気は元に戻っていた。

「ともきちあんたも謝りなよー。」

「ごめんね。」

島流しに関しては、全然気にするところじゃなかった。
それよりも、この2人が想像よりも素直そうなことに驚いてしまった。

「あたし帯谷凜子だよー。よろしくね。」

「小野町たまきです。よろしくねー。」

「俺は楠瀬トモキ。」

「…ともきちじゃなくて??」

確かさっき、凜子ちゃんがそう呼んでたような…。


「あははははは!」

凜子ちゃんが豪快に笑う。

「そう呼ぶのは凜子だけ。
俺が犬みたいだから、“とも吉”なんだとさー。
これ結構ひどくね?」

「えー何でー?可愛いじゃん!
ともきちお手!」

「…わんっ!」


凜子ちゃんの手にさっと手を乗せるトモキくん。
それが本当に従順な犬みたいで、思わず大爆笑の私。



こうして、私は凜子とトモキに出会った。

私の人生が、ゆるゆると動いていく瞬間だった。