「俺、パーマは好きだけどエクステ嫌いなんだよね。」

なるべく軽く聞こえるようにさらっと言うはずだったのに、予定より低くてきつい言い方になってしまった。

凜子は俯いてしまったが、すぐに顔を上げて

「結構好き嫌い別れるよね。」

明るい声でそう言って笑っていた。
返す言葉が特に思いつかず、そうらしいね、と適当な返事をした。
どんな髪型をしようと凜子の自由だ。
俺が例えエクステを嫌いだろうと、その理由がエクステを嫌いな大半の奴とは少し違っていようと、凜子には関係ない。

それなのにそんなことを言った理由が、自分でも分からなかった。凜子の反応を見てどうしたかったのか。
凜子の反応がどんなならよかったのか。
それさえも分からなかった。

会話を広げる術もなく、エクステの話はそこで終わった。

凜子もコームをポーチにしまって、

「たもっちゃんは今日も休みかな。」

と言って保にメールを打ちはじめた。

2人は友達だから、と言ってアドレスと携帯番号を教えてくれたのは、保が友達宣言をしてから3週間も経った後だった。
それから数ヶ月が経ったけど、俺と凜子の距離は、どれくらい縮まったんだろう。
人との距離を計る物差しがあればいい、なんて少女じみたことを思ってみたりした。