「これ…。」

俺はそれ以上何も言えなかった。
その写真すべてに、母親が写っていた。


高級ブランドの店からいくつもの紙袋を持って出てくる母親。

男に腕を絡ませる母親。

クラブらしきところで両手を男の首に回しキスをしている母親。

昼間に男と手を繋いでホテルに入っていく母親。

ずいぶんと古い写真もたくさんあった。

「これはな、雇った探偵に撮らせたものなんだ。」

おやじは俺の顔色を確かめながらゆっくり話し始めた。

母親が遊び歩いている事、小遣いとは別に生活費として渡している金の一部を、自分の為に使っている事、他に男がいる事…。
おやじは全部知っていた。
それもずっと前から。
知った上で黙っていたんだそうだ。

「おやじ、嘘とか不誠実なこと嫌いなんじゃねぇの?
なんで今まで許してたんだよ。」

そんなにあんな奴が好きなのかよ、そう思って俺は半ば幻滅した。
おやじだったらもっといい女とやり直すことだってできるし、あんな女にこだわる理由なんてないと思った。