ちょうど俺が受験勉強をしている頃。
部屋の中にいてもキーンという音が聞こえてきそうなほど冷え込んだ夜だった。
母親は、ミニスカートにロングブーツ、白いニットにコートを羽織って、家を出て行った。
その少し前に

「もぉついたの~?早いよぉ。
…分かった、すぐ行くね。
…うん、私も早く会いたいよ。」

こんな感じの事を猫なで声で話していた。
男に会いに行くのは明白だった。
そんなことにも、一人で過ごすには広すぎる部屋にももう慣れていた。
何も感じないし、これが普通だって思っていた。
あぁ、女ってくだらねぇんだな。
って、その程度の話だった。

11時頃だったと思う。
別の部屋で物音がした。
母親が出て行って2時間ちょっとしか経っていない。
でもおやじは泊まりで出張だったはず…。

(…空き巣?)

その頃俺の家の付近で、空き巣に入ったつもりが住人がいて、その住人を殺して逃げるっていう事件があったばかりだった。
俺はそれを思い出して怖くなり、電気を消してそっとベッドに潜った。

すると、ドタドタと慌てたような足音が俺の部屋に近づいてきた。

(殺される…)

俺はギュッと目をつぶって、息を止めて、殺されずに済む事を祈った。