俺は小さい頃から託児所に預けられていた。
おやじは反対していたらしいけど、

「だったらあなたはトモキの面倒が見れるの?」

と、母親に責められ、仕事第一だったおやじは母親の意見を飲み込むしかなかった。
でも、俺を託児所に預ける理由なんて、本来はない。
おやじの稼ぎで、生活するには十分すぎるほどの金があった。
母親は一応“専業主婦”だったんだ。
じゃぁ、何で俺は託児所に預けられてたのか…?

その答えは簡単だ。
おやじと18歳も年が離れていた母親は、俺を生んだ時でさえまだ20歳だった。
遊びたい盛りだったのだ。
遊ぶには俺が邪魔。
いつだったか母親は、そのころの事を振り返って

「あんたがいたらナンパもされないし、ベビーカーは歩くのに邪魔だし、だったら預けるしかないじゃない。」

当然のようにそう言っていた。
俺に愛情なんてなかった。
俺の誕生日すら覚えていないんじゃないかと思う。
俺は、ただおやじと結婚するための手段として作った子供だった。
結婚さえ出来てしまえば、あとは用無しだったってこと。
それはおやじも一緒だった。
おやじは母親にとって、ただ金を運んできてくれる働き蜂にすぎなかったんだ。