放課後、凛子はたまきちゃんと楽しそうに教室を出て行った。

「家ついたらメールするね。
ばいばーい。」

「おうっ。たまきちゃんもまた明日な~。」

「うん、じゃぁね~。」

少し離れた席にいる保は、i-podのイヤフォンを耳にさして、自前の鏡を見ながらワックスで髪を整えていた。

「ん~~~~。暇だぁ。」

取り残された俺は、机に突っ伏して伸びをした。
放課後を久々に一人で過ごす。

「大きい独り言だねぇ。」

バシンと背中を叩かれた。
びっくりして振り返ると、美樹が立っていた。

「何?ついに嫁に捨てられた?」

美樹はニヤニヤ笑いながら俺の前の席に、俺の方を向いて座った。
座ったって言うよりは、椅子に跨っているって言った方がいいかも。
ふわっと、香水の匂いが漂う。

「凛子は俺の事捨てたりしませんー。」

「はいはい。仲良しですもんねー。
ってか嫁って言うより飼い主だもんね。」

「うるせーよ。
美樹は今日、自慢のつぅくんと会わねぇの?」

つぅくん…佐々木翼は美樹の彼氏、そして俺の同中の友達だ。
合コン好きの翼に頼まれてセッティングした合コンで2人は知り合った。
確か、まだ付き合って2カ月程度だったと思う。
俺らのその頃って言ったら、毎日が楽しくて、離れてる時間は1分でも惜しかった。
顔の筋肉がなくなったんじゃないかってくらいだらしない顔をしていたと思う。
でも、今日の美樹は“つぅくん”という名前を出すと、急に顔色を曇らせた。