「おーい、ともきちくーん。
起きますよー。」

…頭上で俺を呼ぶ声がする。
ふわふわとどこかをさ迷っていた俺の脳が、ゆっくりと覚醒する。
顔をあげると、凜子と目が合った。

「ともきち〜。
学校来ても寝てたら意味ないじゃん。」

「ん。1限始まるまでならいいかと思って。」

俺の発言に、もう、と言って頬を膨らます凜子。
あれ、なんか変な事言ったか?

「トモキ君…もうお昼だよ?」

横でお弁当の袋を持ったたまきちゃんが、くすくすと笑いながら教えてくれた。

「嘘だろ?」

教室を見渡すと、確かにみんなお弁当やジュースを机に広げている。
廊下もやたらと賑やかだ。

「ともきち何回起こしても起きないし。お弁当没収だよー。」

「ごめん、凜子!凜子様!凜子姫!
俺の楽しみベスト3を取らないで下さい!」

机に手をついて頭を下げる。
もちろん凜子が本気で言ってるわけじゃないことは分かってるし、俺も同じなことを凜子は分かってる。

「しょうがないなぁ。
さ、屋上行こっか。」

凜子は楽しそうにそう言って歩き出した。
普段は猫目なのに笑うと垂れる目は、凜子の魅力の一つだと思う。
たまきちゃんが凜子の後ろを歩くから、俺もそれに倣ってたまきちゃんの後ろに続く。