「それにしても、アヤってボンボンだったんだ」

ビールの注がれたグラスに口をつけながらいうと、アヤは不思議そうに首を傾げた。

「ボンボン?なんだ、それ」

「え?あー…」


いけない、日本語が通じるけど、アヤってば日本人じゃないんだ。


慌てて意味を考え、しどろもどろになりながら回答する。

「その、なんだ。えーっと…あ、そう!お金持ち?の家の子?」

「…疑問に対して疑問で返すとは、なかなかやるな」

言われて私は、少し苦笑いを浮かべた。

「まぁその。身近でお見合いとか、そんな話聞いた事なかったし。それに政略結婚とか、ほんとにあるなんて思わなかったんだよね」

ぐいっとビールを飲み干すと、アヤが手に持っていたビールを、私のグラスに注いでくれた。

「あ、ありがとう。…だからさ、アヤって結構イイとこの子なんだなーって思って」

私が言うと、アヤは表情一つ変えず、ただ小さく、別にとだけ呟いた。