「わぁ」

乾いた声。
変な声が出た。


私も片付け得意じゃないし。部屋、散らかってるけどさ。


足の踏み場はどうやらあるみたいで、彼はひょいひょいっとリビングを進んでいき、冷蔵庫から水を取り出した。

「悪い、少し散らかってるが気にするな」

「はぁ」


どこが少しなんだろうか。


周りを見て、私の頭の中に、ふとそんな疑問が浮かんだ。
積み上げられた本に、たぶん洗濯をして取り込んだのであろう服。
散乱するゲームや音楽CDに雑誌。
何語かはわからなかったが、いろいろ書かれてある書類。

彼は水をコップに注ぐと、それを渡してきた。

「ありがとう」

お礼を言って、コップを受け取る。
が、置いてあるソファーには、ダンボールが所狭しと積み上げられていて座ることができないため、私はあきらめて立ったまま一口、水を飲んだ。

「あー…悪い」

苦笑いを浮かべながら、彼も水を一口飲んだ。

「掃除…これはさすがにした方がいいと思うんだけど」

言うと、肩をすくめながら答えた。

「まぁ…そうだな。でも、もうこの家にいるのも後少しだからな。だからいいかと思って」

そう答える彼に、私はただ小さく、ふーん、とだけ答えた。