何が起こったのかわからなかった。
一瞬、目の前の景色がぶれた気がした。
そして気が付いたら、口を押さえられて、路地裏に引っ張り込まれていた。


『しっ』


誰かはわからないが、たぶん、助けてくれている。んだと、思う。

後ろから私が動かないようにがっちりと固められて、身動きが取れない。だけど、あの2人に突き出す様子も無い。
物陰に隠れて、息を殺して、後ろの人物も様子を伺っているようだった。

鼓動がまるで大荒れの海のように波打つ。背中が汗でぐっしょりになるのを感じた。


「Est-ce qu'il y avait le?」

「No. Cette place?」

「No. Je suis alle a ou que.」


物陰に隠れて、じっと息を殺して2人の様子を伺う。


見つかったらどうしよう。


その恐怖だけが自分を支配する。


『ダイジョウブ』


え…?


小さな声で、後ろから声が聞こえた。聞こえたその声は、聞き覚えのある声だった。



まさか、そんな。



何か一言二言、男達は言葉を交わすと、私たちには気づかず、そのままどこかへと走っていった。