「どうした?」

言われてハッとする。

「ううん、何でも」

顔がひきつっているような気がしたが、とにかく何もないと、必死で笑顔をつくって応える。

「そうか。それで、今日はどうするんだ?」

言われて私は、話題がそれたことにホッとしつつ、辺りをキョロキョロと見回した。

「とりあえず、今日はブラブラ昼の街を散歩してみようかと思ってる」

すると、彼は頷いた。

「いいな。旅行にきたからには、のんびりとその街を感じることは必要だ」

「あは、ありがと。まぁ単純に、私が無計画なだけなんだけどね」

思わぬ誉め言葉に、少し照れながら答えると、彼は笑った。

「自然体がそれならばなおさらいいじゃないか。俺はお前のそんなところを好ましく思うが?」

「へっ!?」

突然好ましいだとか言われて、思わず奇声をあげる。他のテーブルのお客さんや、店のマスターたちが、不思議そうにこっちを見てきた。