食後の紅茶を飲みながら、ふと、外を見る。スーツ姿の人や、学生らしき人たちが行きかう姿がちらほらと目に付いた。

「そういえば…ここの人なんだよね?」

うん?と首を傾げて、彼は持っていたカップをテーブルに置いた。

「それがどうかしたか?」

不思議そうに聞き返されて、私は慌てて続けた。

「え?いや…私は旅行だからあれだけど。学校とか、仕事とか、あったりしないのかなって」

言うと、彼はあぁ、と頷いた。

「学校ならある、が、今は夏休みだ。お前もそうなんじゃないのか?」

言われて、確かに、と私は頷いた。

「学生さんってことは私と一緒だね」

「そうだな。確か大学4年生だったか?」

言われて頷いた。

「うん、だから、今回の旅行は卒業旅行で…」

途中まで口にして、アイツの顔がフラッシュバックする。
一瞬にして甦る記憶に、私は思わず口を閉ざした。