(四)


「大丈夫か?百合子」

翔に殴られた顎をさすり、達也はよっと腰を浮かした。

静寂が戻った小屋の中で、百合子のすすり泣きだけが聞こえてくる。

「もう泣くな」

ズボンの埃をはたき、ゆっくりと百合子の前に屈むと、達也はその艶のある黒髪をぐしぐしと撫でた。

「だ……って……」

「いーから」

「私がしっ……かりしてたら、きっと誰も苦しまずにすんだ……のに」

顔を伏せ、部屋の隅でうずくまっている百合子の華奢な体が、しゃくり上げるように上下に揺れる。