そう。コイツの言うとおりだ。

言い返す言葉もない。

あの時、列車の窓から潜水橋の上に立つ百合子の姿を見つけた時、すぐにでも引き返して連れ去っておくべきだったのだ。

だけど、自信がなかった。

自分のような荒んだ人間に、百合子を幸せにしてやれる自信など、持てるはずがないじゃないか。

だから、逃げたんだ。



「……わりぃ」

「あ?」

ぼそりと呟いた達也の胸を締め上げ、翔が拳を握りしめた。