「…………たっちゃん!」

「よお」

「どうして?」

大きな目で真っ直ぐに見る。

「本当は今日帰るはずだったんだがね。ちと野暮用を思い出してな」

「たっちゃん」

百合子は、達也の顔を見るなり嗚咽をこぼし、堰を切ったように泣き崩れた。

会いたかった。

ずっと一緒にいたかった人がいる。

引き留めることができなかった。諦めるしかないと思っていた。

「うああ……」

百合子は嗚咽を溢し、コンクリートの床に爪を立てた。