──どうしよう。
悩むユリカをよそに、女性はますます必死に『お金、下さい』と頼み込む。
その様子を見ていたらしい、ユリカの隣に座っていたテラーが、静かに立ち上がったのが見えた。
後ろにいるタジマ次長へと身を乗り出している様子だ。
もしかして、何か言ってくれているのだろうか。
いつもはあまり頼りにしていないタジマ次長だが、この時ばかりは、早くなんとかしてくれと、心の中で祈った。
「どうかなさいましたか」
優しい目を笑顔で更に細めながら、人のよさが溢れる表情で、タジマ次長がカウンターごしに女性へ話しかける。
邪魔にならないよう、ユリカは半歩下がった。
それだけで、気づかぬ間に自分で張り詰めていた気を、少しだけ抜くことが出来た。