ユリカは思わず、両替の伝票へ目を落とす。


そしてつい先程まで現金の乗せられていたカルトンへ。


一円たりとも残っていないことを確認し、女性の顔へ視線を戻した。


女性は必死にユリカを見つめている。


その表情から笑顔は消え、困ったように眉を下げ、唇もきゅっと強く結ばれている。


ユリカはわけがわからず、思いつく限りの言葉を並べてみることにした。


話すのはたどたどしくとも、弁当屋で働いている以上、聞くのは出来るだろうと思ってだ。


「両替が合わなかったのでしょうか」

「違う」


「では、ご融資のご相談でしょうか」

「ゴユウシ?」


「あ、ええと、銀行からお金をお借りに……」

「違う」


どの言葉にも否定をして、一度口にしたら言いやすくなったようで、

またしても後ろを指差しながら、女性はきっぱりと言った。


「お金、下さい」