まさかもう支店に戻ってきているとはツユほども思っていなかったのだ。
タカヤに限らず、営業係は通常、4時過ぎに帰店することが多いからである。
為替を預かっていたら別だが、当日になんとかして欲しいだなんていう振り込みはまず預かってこないから、3時になんでかんで帰ることはないのだ。
そして案の定というかなんというか、後ろから次長が何か言ってるのが聞こえた。
電文を打ち終えたので、受話器は耳に押さえたまま、電文をプリントした伝票を片手に振り向く。
タジマが眼鏡の奥──確か老眼鏡である──から、黒くてつぶらな瞳を隠すよう、何度もまたたきをした。
電文が印字された伝票をチェックし、目に疲労がたまった意味もあったろう。
肩もこっているのか、首を左右にコキコキと動かしながら、タジマも時計を見た。
「タカヤ君、こんなに早く戻って来たのか?
早いのはいいけど、目標は出来たのかな。
ちょっと目標出来たかきいてみてくれ」
──なんで私が。
この忙しいさなか、自分がタカヤにきくのは筋違いな気がした。